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地方自治職員研修 2005年4月号掲載

e−ガバ時評 (4)
● 電子入札ならいいでしょ!? ●

「共 同アウトソーシングって問題ありそうだけど、電子入札ならいいでしょ!?」
 住基ネット問題に批判的なある市会議員さんと話をしていたら、とつぜんそんな話が飛び出てきた。住基ネットの利用とは直接関係しない電子入札(電子調達)には、「反対する理由がない」ということらしいのです。実際、自治体の電子調達システムの共同運用に対する関心はかなり高く、最近では東京都と市区町村による「電子自治体共同運営サービス」でも、電子調達は昨年12月から一部サービスを開始し、2005年4月の本格稼働を予定しています。

の議員さんの話は、その数日前、東京都の「新交通システム」工事入札について、こんな新聞記事が出たことから始まったものでした。
 「東京都が建設を進める新交通システム『日暮里・舎人(とねり)線』の橋梁(きょうりょう)工事で、業界で『アウトサイダー』と呼ばれる東北地方の橋梁会社が入札に参加すると、落札率(予定価格に対する落札価格の割合)が大きく下がっていたことがわかった。6割を切った例もあり……」(朝日新聞東京版2005年1月29日)
 要するに、談合組織が高値落札を仕切っているという、よくある話なんですね。「電子入札システム」による一般公開入札なら、情報公開度が高いので「談合」組織に気づかれずに新規参入企業が応札できる。だから「電子入札ならいいでしょ!?」と、市議さんは言いたいらしい。
30日には、産経新聞もこの問題を記事にしています。それによれば、02年4月から05年1月までの東京都の鋼鉄製橋梁の建設・補修工事55件中、37件は端的に談合が推測される落札率95%以上の高値落札。90%以上の落札率では45件(工事総数の8割超)になるとのこと。
 実は、東京都独自の電子調達システムは02年9月から稼働していました。本格的な利用が進むのは03年ということでしょうが、いずれにしても、都独自の「電子調達」採用後も高値落札の状況は変わっていないことになりそう。先の市会議員さんが期待した「電子入札」による公共事業への「新規参入促進・談合排除」は、実はほとんど期待できないのが実態のようです。
 とはいえ行政機関へのIT導入の目的は、むろん「談合排除」ではありません。こうした効果は、あったとしても副次的なもの。主要な目的は、新たに必須となってきた新規行政サービスへの対応や効率化・コストダウン、とりわけ行政組織や実務全般の改革ということでしょう−−各自治体の情報化計画に書かれている「BPR」って、そういうことですよね!
的に言えば、行政へのIT導入(電子政府・電子自治体の構築)は、ITでなければ実現できない種類の課題への「挑戦」が主要な目的になるはず。そのいちばん大きな部分は、やっぱり行政改革なのだと思います。民間企業が過去10年くらいの間、経済のグローバル化に対応する中で「血を流して」IT導入を進めてきたのは、企業組織や業務の抜本的な改革にITが有効だと理解されてきたためです。民間のIT導入は「守り」の姿勢であると同時に「攻勢」だったわけですが、「遅れて来た行政機関」のIT化ではどうなのでしょうか?
 行政が今抱えている課題には、ITで解決できるものがあります。しかしその中には、IT以前に解決できる−−むしろIT以前に解決すべき課題がたくさん含まれています。「談合の排除」がその典型例だとしたら、「IT以前」に解決できる問題については、きちんとした解決の見通しを立ててからITの「援用」を構想するのでなければ、確実な効果は期待できないでしょう。
 ともかく、「談合」問題は電子政府・電子自治体以前からの情報漏洩、情報セキュリティの問題であることは確かです。

©2005 Nishimura, Tohru
連載:2005年1月号より(全タイトルはこちら)
掲載誌:月刊「地方自治職員研修」
発行:公職研 Tel.03-3230-3701(代表)
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