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地方自治職員研修 2005年5月号掲載

e−ガバ時評 (5)
● 自治体にはIT技能者がいないと言われるが…… ●

4 月から、「東京電子自治体共同運用センター」では電子入札関係のサービスが開始されて、予定したサービスがすべて稼働するそうです。
 この共同運用サービス利用の準備に関わった、ある自治体職員の感想を聞く機会がありました。あまり元気の出る感想ではありません。「電子申請の稼働直前にたまたま機能を検証していたら、閏年の日付を入れるとエラーになった。誰もまじめに検証をしていない……」。
 彼の話は、結局のところ「新しい申請方法ができちゃうのは、現場にとってお荷物なんですよね……」というところに落ち着いてしまいます。これは、住基ネット問題に批判的な関心を持つフリーライターなどをしているので、何度も聞かされてきたことでした。

はいえ、このとき初めて気づかされたこともあります。いま自治体に導入されてきている「IT」のシステム(電子自治体)は、現場の職員が毎日感じている課題にうまくこたえてない、現場の期待からどこかズレてる、ということです。この職員は、新しいシステムに普通なら感じるだろう感動ではなく、おそらくは予想した通りの、「幻滅」を感じています。
 その結果「IT」への関心を、少しずつそがれてしまっている。……このスレ違いと「IT」への期待や関心のスポイルは、もしかしたら、20年くらい前に始まった「電算化」(大型コンピューター導入)のときからずっと、続いているのではないだろうか?
京電子自治体共同運用サービス「入札説明書」の「事業の目的」にはこう書かれています。
 「自治体の業務を短期間に大幅に改革するためには、多大な財政負担、人的負担が発生するため、各自治体が個々にすべてのシステムの構築・運用を行っていくことは困難であるといえる」。
 自治体にはITの技能を持つ職員が非常に少ないのだという話はよく聞かされてきました。「だから共同アウトソーシングだ」、という話には説得力があります。でも、本当に自治体には人材が不足しているのでしょうか?
 「日経コンピュータ」誌2005年1月24日号の「本邦初! システム部門/部長実態調査」によれば、IT担当部長の「3割は利用部門出身」だと報告されています。「システム部長として求められる能力とその達成度」では、重視される能力でありながら「自信がない」と回答されているトップ2は「経営・マーケティングの知識」と「会計・財務の知識」だそうです。要するに「IT」担当者に要求される基礎的な能力は、技術ではなく、経営の実態と課題をどれだけ的確に把握できるか、ということ。むろん技術を知らなくてはつとまらないけど、技術者である必要はありません。
 この調査はまた、1部2部上場規模の民間企業における、社員総数に対する「IT部員」の比率を0.9%だと報告しています。別の記事では、社員1400人規模のある有名食品メーカーのIT部員は「たった4人」だとも書いていました。たぶんこれは、自治体の現状と大差ない。
もかくこうなると、「IT部門」は技術を自分で駆使することなどとうていできません。最低限しなければならないことは、外注先の仕事ぶりを「厳しくチェックすること」、そして外注先にシステムの開発や運用の意図を明確に伝えること、つまり「経営戦略」や事業展開の企画立案なのだそうです。それが「IT」導入でしのぎを削る民間企業の実態です。
 「IT」担当職員は「技術者」である必要はありませんが、「IT」に対する関心や期待をそがれたスタッフにつとまらないことも確か。おそらく、もっとも不幸なことは、職員の信頼と期待を回復するために何をすべきか、ITの側のだれも理解していないことです。

©2005 Nishimura, Tohru
連載:2005年1月号より(全タイトルはこちら)
掲載誌:月刊「地方自治職員研修」
発行:公職研 Tel.03-3230-3701(代表)
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