Home | 連載タイトル一覧

地方自治職員研修 2005年7月号掲載

e−ガバ時評 (7)
● 佐賀市とサムスンSDSによる「共同開発」 ●

20 05年4月1日、人口16万人の市で、日本初の「外国企業」開発になる基幹系業務システムが稼働しました。2003年末「業界の常識を大きく揺さぶる商談」(「日経ソリューションビジネス」誌2004年4月30日号)として注目を集めた、韓国のサムスンSDS社が納入した佐賀市の基幹系システムです。4月6日の記者会見で木下敏之佐賀市長は次のように語っていました。
 「日本の自治体は古い大型コンピューターシステムを使い、大手メーカーに開発を頼り切っている。自治体が金を払って開発したにもかかわらず自治体はソフトの著作権を確保していないので、プログラムが非公開になり、その維持管理・改修は開発メーカーの系列会社に頼むしかない。(結果として開発も維持・改修も)費用が高止まりしているし、地元IT企業に(行政システム受注への)参入の余地がない。
 これらの問題をいっきょに解決するため、ダウンサイジング、ソースコードの公開(著作権の共同所有)、プログラム言語にJavaを使うなどを基本として、システム切り替えに取り組んだ。」(佐賀市ホームページより)

賀市が強調していたことは、何よりも「大手ベンダー依存からの脱却」でした。その結果、第1に5年間で約3億円の経費削減ができる、第2に通常なら数年間かかる新規の基幹系システムの開発・稼働を実質1年あまりで実現できた、第3にソースコード開示が可能になり、地元IT企業に行政システムへの参入の道が開かれたと、佐賀市は指摘しています。また、全市で約60にのぼるシステムの統合基盤ができたことにより、今後の基幹系以外のシステムの切り替えを通じて、さらに大きなコスト削減効果が得られることを、大きく期待しています。
ろん、佐賀市はそれなりのコスト負担もしています。報道によれば、サムスンSDSの入札は最低価格ではなかったとのこと。他の大手ベンダー4社の中にはより低額を提示した場合もあったようですが、いずれも「ソースコードの公開」や「短期間での開発」という条件を満たすことができなかったと書かれています。
 市の担当職員も「業務の内容をきちんとフローチャートにする」など一定の技能を身につけることが求められました。記者会見でも今回の開発は「共同開発」だと言われています。この、佐賀市が保有する「技能」のレベルは、今後の各種システムの新規開発やシステムの改修にあたって、職員が独自に「仕様書」を作り地元IT企業などに提示できるレベルのもの。民間企業のIT部門と同じレベルだと言えるでしょう。
賀市の考え方は、社員数が1000人を越える規模の民間企業にとっては、ある意味で「常識」です。確かに、「自治体がプログラムの著作権を所有する」ことは、ベンダー依存体質脱却の決定的な基盤となるでしょう。しかし総務省の2004年度の実証実験の中では、さらに一歩進んだ「自治体間での共同開発・ソフトの部品レベルでの共有/オープン化」という課題も掲げられていました。
 何よりも気になったのは、佐賀市のシステム開発では制度改革を伴う業務の改革−−行政改革が先送りされているように見えることです。単に「ダウンサイジング(IT導入)による電子自治体の基盤整備が進んだ」とだけ評価してしまうのではなく、今後、自治体レベルでの「行政改革」の効果が大きく期待できる「行政サービス業務のBPR/IT化」を射程に入れた、新しい発想の基幹系システムをデザインすることが自治体には求められているのではないでしょうか? 2004年度の総務省実証実験が「制度改革の先送り」にともなって想定せざるを得なかった、「数年後の将来モデル」における二重開発のようなことが、現実の自治体に許されるとは思えません。

©2005 Nishimura, Tohru
連載:2005年1月号より(全タイトルはこちら)
掲載誌:月刊「地方自治職員研修」
発行:公職研 Tel.03-3230-3701(代表)
office dlc のロゴマーク