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地方自治職員研修 2005年12月号掲載(最終回)

e−ガバ時評 (12)
● 電子自治体構想策定への「住民参加」は? ●

子政府・電子自治体の「アーキテクチャー」(基本構造)は、いったい誰がどうやって決めたのだろう? 住基ネットでいえば、市町村が都道府県に「通知」して情報を集積し、さらに都道府県は全国サーバーに集積した上で「国の機関」に「提供する」という、中央集中型の論理的ネットワーク構造のことです。国の機関と自治体をつないでいる他の2つのネットワーク−−LGWANと情報ハイウェイ/地域公共ネットワークも、多かれ少なかれ同じ中央集中型の論理的構造を持っていることは、すでにみなさんもよくご承知の通りです。
 こうした構造−−ローレンス・レッシグが『CODE』(翔泳社、2001年)の中で、ネットワーク内での利用者のふるまいを「コントロール」する手段として指摘している「アーキテクチャー」(このコラムの範囲で言えば「電子政府・電子自治体のアーキテクチャー」)は、誰がどうやって決めてきたのだろう?

ろん、それはかなりはっきりしています。決めるのは少なくとも国会じゃない。住基ネットが国会で議論された時、そのアーキテクチャーに言及した議員はおそらくいなかったでしょう。公的個人認証サービスが議論されたときには、「認証局の運営主体は市町村とすべきだ」という修正案が民主党から出されていました。これはアーキテクチャーの一部変更を求めるものでしたが、その提案の意味は十分議論されないまま、委員会で否決されました。
 現在、電子政府・電子自治体のアーキテクチャーを、法案や規則、そしてシステムの基本仕様などの形で決定している主体は、国の機関とその審議会、検討会、研究会などでしょう。
けど、国の機関やその審議会・研究会などが、(強制ではないとしても)ネットワークを利用する「自治体コミュニティ」や「地域コミュニティ」のアーキテクチャーを−−つまり自治体や地域住民のそのネットワーク内での「ふるまい方」を決定し、実用化するというのであれば、「住基ネット」や「LGWAN」のアーキテクチャーを国が決めたこととは、かなり意味あいが違います。「地域住民」のコミュニティ内部での行動のコントロールを、地域や自治体ではなく国の機関が(トップダウンで)決めてしまうのですから……。
 ところが、「ICTを活用した地域社会への住民参画のあり方に関する研究会」が2005年12月から実証実験を開始する調査研究事業は、確かにそういう性格のものです。この研究会は、事務局を総務省、地方自治情報センター、三菱総合研究所で構成し、9人の委員と主査のうち自治体関係者は1名だけ。むろんこの研究会には、利害当事者である主権者/地域住民はいません。
 この、「住民参画」に関する研究会の体制は、行政の意思決定過程へのステイクホルダー(自治体と地域住民)の「参加」という視点から見れば、とうてい適切なものとはいえません。つまり、創られようとしている「住民参画」のシステム自体の目的と、完全に矛盾しています。
業の内容を見れば、実証実験されるシステムは地域の民間プロバイダーが提供するコミュニティ機能と変わりません。民業圧迫になりかねない。民間が蓄積したオンラインコミュニティ運営のノウハウなしで、十分な規模の利用者を獲得するのは困難だとの指摘もあります。
 「崩壊した地域コミュニティを再建する」という自治体側の強い欲求があることは理解できますが、だからといって自治体が自前のオンラインコミュニティを運営するのは、非効率なものにも見えます。自治体財政の危機的状況から見れば、共同化したとしてもかなりハイコストでしょう。
 これに対して、地域のプロバイダーが運営する多様なコミュニティを自治体が支援し積極的に情報提供(情報発信)することによって、地域コミュニティのあり方を含めてそれらをボトムアップで育てることは、はるかに安上がりで現実的な手法です。
 行政の意思決定過程への「住民参加」のための「ネットワーク・アーキテクチャー」を、どうやって誰が決めるのか?
 みなさんはどうお考えになりますか?

●本コラムの誌上連載は終了しました。
「e-ガバ時評」は、2006年4月より本サイト上でWebコラムとして再開します。
©2005 Nishimura, Tohru
連載:2005年1月号より(全タイトルはこちら)
掲載誌:月刊「地方自治職員研修」
発行:公職研 Tel.03-3230-3701(代表)
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