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Minoh Report(箕面レポート)
 はじめに

 2006年11月30日、大阪高等裁判所第7民事部竹中省吾裁判長が出した判決は、住基ネット制度には「制度的欠陥がある」として、住基ネットの適用を明示的に望まない原告の「住民票コード」を住民基本台帳から削除することを被告3市(吹田氏・守口市・箕面市)に対して命じ、さらにこれを被告箕面市1市が受け入れて確定させた(吹田市・守口市は上告)ことで、きわめて大きな注目を浴びたものだった。同時に、高裁判決を確定させた箕面市の職員や市議会および市民の間に、多くの混乱した議論を呼び起こした。

 この判決は、ある箕面市議のことばによれば「禅問答のような困難な課題を私たちに提起するもの」である。市町村の住民基本台帳から「住民票コード」を削除することによって、現在の「住基ネット制度」のもとでは、「住民票コードが削除された本人確認情報(変更通知)」はきわめて多数の「行政のコンピューターシステム」(市町村・都道府県および国の機関のシステム)に送信されることになるはずだが、これらのシステムの大部分は、送信された「住民票コードが削除された本人確認情報(変更通知)」を受け取ることが、その機能上できない。

 その意味で、今回の大阪高裁判決は「住基ネット」の本質的的な転換を求めるものであるといえるだろう。たとえば日経BP社の「ガバメントテクノロジー」誌のWebサイトは、同誌の黒田隆明編集長の記事の中で、次のように述べている。
……最高裁で住民の住基ネット離脱が認められれば、実質的に住基カードとセットでしか使えない公的個人認証も含めて、制度・システムの再設計は必至となるでしょう。一方、もし最高裁が「プライバシー権の侵害やその具体的危険性があるとは認められない」という判断を下したとしても、すぐに皆が「では住基カードを取得してサービスを利用してみよう」とはならないでしょう。住基カードの取得率が低いのは「使ってみたいと思うサービスがない」というだけでなく、利用者からの信頼が低いことも一因なのではないでしょうか。(中略)  最高裁の判決がどのようなものになるにせよ、「2007年は何らかの“住基ネットの信頼性再構築”のための対策が講じられるだろう」と、本稿では期待を込めつつ予想しておきたいと思います。(「“信頼の再構築”という観点に注目したい電子政府/電子自治体」2007/01/19)
 いずれにしても、今回の高裁判決を「実施」することには多くの困難がともない、判決を受け入れた箕面市には、これを国との緊張関係の中で実施する強い「自治」の能力が問われていると考えられる。この、国との緊張した関係は自治体住民/市民の中での合意形成(住民自治)にも大きな影響を及ぼしており、「信頼性の再構築」というよりは「信頼関係の再構築」という、行政の内部では完結しない困難な政治課題を、箕面市だけでなくすべての自治体に対して提起している。

 本報告では、この大阪高裁判決とその箕面市における確定の過程で顕在化されてきた、「住基ネットをめぐる困難な課題」について、予備取材を含め3回の現地取材などを通じて得られた情報を整理し、コメントしている。

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© 2007.3.1 Nishimura, Tohru / office dlc