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韓国の全国教育行政システム(NEIS)

 少し、具体例について見ておきます。

2階層の中央集中型ネットワークシステム

 この図は、韓国の全国教育行政システム:NEISの概要図です。中央の太い黒枠の中に、国のレベル(教育人的資源部:日本の文部科学省に相当)と、大都市・都道府県のレベル(市・道教育庁:日本の政令指定都市および都道府県の教育委員会に相当)で2階層のデータベースが運用され、国のデータベースが全体の情報を統括する集中型のシステムを構成していることが分かります。
 また、国レベルのシステムは、国の他の機関のシステムに対して情報を提供しています。これは、日本の住基ネットが霞ヶ関WANを通じて国の機関に情報を提供している構造と共通しています。

 こうした中心的なシステムに対して、地域教育庁(日本の市町村教育委員会に相当)や各種の学校のシステムが、さらに下位のネットワークを構成し、情報の入力(提供)と参照をしています。

端末はインターネット経由で接続

 興味深いことは、地域教育庁・学校だけでなく、このシステムに接続する教育人的資源部(国)や市・道教育庁を含めて、このシステムに接続する端末あるいはクライアントは、インターネット上から、おそらくはVPN(暗号化による仮想専用線機能)とPKI(個人認証機能)を使ってアクセスしているということです。
 この基本設計は、日本の行政システムとはかなり違っているように見えますが、経済効率とセキュリティ上の安全性を勘案すれば、このような手法で「インターネット」を使うことは、一定水準の安全性(セキュリティ強度)を経済的に確保する手法として技術的には確立されており、日本の住基ネットやLGWANように加入者のみが共用するインターネットとは別のIP-VPN専用回線網(一部に専用線も使っている)のコストを排除していることは、ある意味では合理的な選択と考えられます。

システム上に本人が存在しないというMIS的な特性

 このNEISシステムの特徴としてもうひとつ指摘しておく必要があることは、教育サービスの一方の本人である「学生・生徒」がこのシステム上には存在していない、ということです。従来からのMISの特性として、システム上で取り扱われている「個人情報」の「本人」はシステムの「参加者」ではないので、NEISがMISとして設計されていることを端的に現わしているともいえます。
 またもう一方では、日本や韓国では(おそらくは東アジアを含む広い地域では)、「教育」は行政を唯一の主体として実施される事業として法制度や社会的慣習が形成されていることを反映しているのではないかと考えられます。

 なお、このシステムは2003年春から稼働しています。稼働開始までに、多くの市民から人権侵害/プライバシー侵害の可能性が高いと指摘され、2003年春にはソウル市内で稼働中止を求めるハンストが行なわれるなど、韓国では社会的な注目を集めているシステムです。


●もくじ(Slide番号でジャンプ)

01:行政機関のMIS的なネットワークシステムへの傾斜と 人権保障・プライバシー保障の課題

02:1 東アジアの動向

03:  韓国の全国教育行政システム(NEIS)

04:  My Kard(マレイシア)

05:2 MIS的なインターネットへの警鐘

06:3 行政における統制型(MIS的)ネットワークシステムへの傾斜

07:  住民基本台帳ネットワークシステム(論理的構成)

08:  自治体共同IDC(経済産業省実証実験)

09:4 行政(公共)サービスにおける 個人情報の収集・利用

10:5 行政(福祉)サービスにおける プライバシー

11:6 行政システム/サービスにおける人権/プライバシー侵害の発生要因

12:7 (日本の)NPOおける課題

13:8 NPOをとりまく環境(1)NPOのネットワーク接続

14:9 NPOをとりまく環境(2)ネットワーク環境

15:10 NPOをとりまく環境(3)プライバシー保障

16:11 NPOの課題

17:12 国際的な課題

18:  参考資料