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2 MIS的なインターネットへの警鐘

 「MIS的なネットワークシステム」に注目した第2の動機は、2003年春になって雑誌に発表された、CPSR-Japanの藤本一男さん(作新学院大学)による「MIS的インターネット」への警鐘でした。

初期インターネットが形成した「自由な個人」という油断

 藤本さんは彼の論文に収録したこのイラストの中で、「初期インターネットが形成した『自由な個人』」という概念にインターネットユーザーは「油断」してしまっており、インターネットの商用化・大衆化(ISPを骨格とするインターネット)の中で「国家によるインターネットへの介入」が進み「MIS的なインターネット」への「ネットの変質」が進んできても、それが見えなくなっているのではないか、と指摘しています。

 ここで藤本さんが指摘している「MIS的インターネット」は、本報告の「MIS的なネットワークシステム」ということばが指している「行政サービスに関わるネットワークシステム」よりもかなり広い概念で、必ずしも行政機関がダイレクトに運用するネットワークシステムを指しているわけではありません。

 ネットワーク上での「自由な個人」ということばは、非常に新鮮な概念として過去10年以上、インターネット利用者だけでなく、市民的権利の拡大を求める全世界の人たちに、とても大きなパワーを供給してきました。また、現在もたくさんの市民グループがこの優れた概念の持つパワーを市民的活動の源泉として積極的に使用しており、現に多くの成果を積み重ねてきています。そのパワーには、当然のことですが、インターネットが実現した情報の自由な発信・共有という機能が供給しているパワーが含まれています。

MIS的な特性を強く持つ行政システム

 世界各国政府は、当然のことながら、インターネットが確立してきた分散開放型の情報処理システムを行政にも取り入れ、ツールとして利用してきています。しかし、行政による分散開放型情報処理技術の利用は、意図的な設計のもとで行なわれていて、その運営するサーバーが提供する「サービス」は行政だけが行なっているサービスなので、一般のプロバイダのサーバーのように競争的な他のサーバーの存在を気にかける必要はありません。「利用者の囲い込み」が完成しているという意味では、商業プロバイダーには考えられない環境で一方的なサービス提供が実現されているといえます。

 したがって、そこで発信される情報は、唯一の情報源からの発信という性格を強く持ち、その内容が意図的に限定されたり歪められていても、それを社会的にチェックするシステムは有効に働きません。システムの利用者は、唯一のサーバーが提供するサービス(機能)と情報を受動的に受け容れ、その範囲で与えられた役割を果たす「端末」(ターミナル)としての性格を強く持たざるを得ません。このような状況は、程度の差は荒れ、寡占化傾向が進む商業プロバイダー(ISP)などのサイト運営にも見られる傾向といえます。

 以下の報告では、こうした視点から行政システム(電子政府・電子自治体)を批判的に検討する中で、市民グループの置かれている立場と課題を考えようとするものです。


●もくじ(Slide番号でジャンプ)

01:行政機関のMIS的なネットワークシステムへの傾斜と 人権保障・プライバシー保障の課題

02:1 東アジアの動向

03:  韓国の全国教育行政システム(NEIS)

04:  My Kard(マレイシア)

05:2 MIS的なインターネットへの警鐘

06:3 行政における統制型(MIS的)ネットワークシステムへの傾斜

07:  住民基本台帳ネットワークシステム(論理的構成)

08:  自治体共同IDC(経済産業省実証実験)

09:4 行政(公共)サービスにおける 個人情報の収集・利用

10:5 行政(福祉)サービスにおける プライバシー

11:6 行政システム/サービスにおける人権/プライバシー侵害の発生要因

12:7 (日本の)NPOおける課題

13:8 NPOをとりまく環境(1)NPOのネットワーク接続

14:9 NPOをとりまく環境(2)ネットワーク環境

15:10 NPOをとりまく環境(3)プライバシー保障

16:11 NPOの課題

17:12 国際的な課題

18:  参考資料