Slide 06

   


3 行政における統制型(MIS的)
ネットワークシステムへの傾斜

 日本の電子政府・電子自治体における「MIS的なネットワークシステム」の具体例について見ていきたいと思います。

行政システムにおける分散開放型ネットワークの地位

 ここでは、「住基ネット」と「LGWAN(総合行政ネットワークシステム)」を主要な対象とします。2003年の夏になって、初めて「レガシーシステムの見直し」という間接的なことばで「ダウンサイジング」を組織的な方針として採用した日本政府の各機関では、現在でもその主要システムはメインフレームによって構成されるMISそのものだといっていいでしょう。規模の差はありますが、自治体のシステムも、メインフレームやいわゆる「オフコン」をつかったMISが現に使われています。このことは、国および自治体は、MIS以外のタイプの情報処理システムの特性については、ナイーブであることを示しています。

 むろん、政府機関と大多数の自治体では、これらと並行してTCP-IPを使うLANが運用されています。このことは住基ネットのセキュリティ問題などに現われているように、問題をきわめて複雑にする要因として働いています。しかし一方では、公共機関職員が一般のwebサイト上の情報を情報収集のために積極的に利用したり、メーリングリスト上で交換される情報を自己の職業的専門性の中で利用するなど、「インターネット」的な情報ネットワークの利用スタイルが公共機関の中に入り込み、伝統的な行政事務の固定化された手順にさまざまな揺さぶりをかける要因としても働いていることは事実だと思われます。

MIS的なネットワークシステムの特性

 以上を前提に、電子政府・電子自治体の動きを見ていくと、いくつかの特性が見えてきます。

  1. 全国の自治体と国の基幹をつなぐ2つの広域行政システムのネットワーク構造は、日本における自治権の不在を端的に反映した中央集中型ネットワークになっている
  2. 自治体の技術能力・コスト負担能力の欠乏をカバーするために、国からのトップダウンで各種の「自治体共同IDC」が推進されている。このため、地域住民の日常生活に関わる個人情報を含む、自治体内部のセンシティブな情報が自治体共同IDCに集中されようとしている
  3. 国の機関とのネットワーク接続にともない、自治事務に関わる文書を含めて、国と自治体間で交換される多数の文書等の標準化、全国標準ソフトウェアの開発配布が国主導で進んでいる。この結果、自治体の独自権限にもとづく自治事務が、全国レベルで均質化されつつある(極端な例では、自治体の基幹事務のためのアプリケーション自体をIDCによって単一のものとする計画が進んでいる)

電子自治体とMIS的なネットワークシステム

 また、各市町村の電子自治体構築計画を見ると、MIS的な考え方にもとづいて自治体全体の事務処理を統合する方針が当然のこととして採用されている例が多数見られます。自治体全体の電子化が(民間に比べて)非常に遅れている状況の中で、電子政府構築計画の側からそれに対応する自治体の電子化の要求が高まり、住基ネットやLGWANを設計した国の考え方を、そのまま自動的に取り入れる形で電子自治体計画が立てられているためと考えられます。


●もくじ(Slide番号でジャンプ)

01:行政機関のMIS的なネットワークシステムへの傾斜と 人権保障・プライバシー保障の課題

02:1 東アジアの動向

03:  韓国の全国教育行政システム(NEIS)

04:  My Kard(マレイシア)

05:2 MIS的なインターネットへの警鐘

06:3 行政における統制型(MIS的)ネットワークシステムへの傾斜

07:  住民基本台帳ネットワークシステム(論理的構成)

08:  自治体共同IDC(経済産業省実証実験)

09:4 行政(公共)サービスにおける 個人情報の収集・利用

10:5 行政(福祉)サービスにおける プライバシー

11:6 行政システム/サービスにおける人権/プライバシー侵害の発生要因

12:7 (日本の)NPOおける課題

13:8 NPOをとりまく環境(1)NPOのネットワーク接続

14:9 NPOをとりまく環境(2)ネットワーク環境

15:10 NPOをとりまく環境(3)プライバシー保障

16:11 NPOの課題

17:12 国際的な課題

18:  参考資料