Slide 07

   


住民基本台帳ネットワークシステム(論理的構成)

 MIS的なネットワークシステムは、MISの垂直型・統制型システムの特性と、インターネット的な分散型システムの特性を混在させています。

住基ネット・LGWANの中央集中型ネットワーク構成

この図は、住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)の論理的ネットワーク構成です。3つの階層を持った、典型的な中央集中型のネットワークを構成しています。LGWAN(総合行政ネットワークシステム)も同じ論理的ネットワーク構成を持っています。

 この2つは、全国の自治体をつなぐネットワークとして、国の機関が参加している霞ヶ関WANと接続されている点で共通しています。

 こうした中央集中型のネットワーク構成は、国の発信する情報を効率よく全体(全自治体)に送付し、末端の自治体の情報を効率よく収集して中央に集中するための構造です。裏返してみれば、末端の市町村が相互に情報を交換することは想定されていない構造(都道府県は国の出先機関、市町村は都道府県の出先機関とする構造)ともいえます。

 このような構造は、現在の国および自治体の行政組織構造をそのままネットワークに投影したものであって、分散開放型のネットワーク概念にもとづくダウンサイジングあるいはこうした技術を基礎とするBPR(*注)は無視されています。

*注:BPR( ビジネスプロセス・リエンジニアリング)
 最新の情報通信技術、つまりインターネット型の情報通信技術の持つ可能性を最大限に活用して、ビジネスプロセスを作り替えること。縦型/中央集中型に効率化された経営組織と情報の流通経路を根底的に組み替え、組織横断的な情報の流通ルートを確保することによって、まったく新しいビジネス手順・ビジネスチャンスを創造し組織の活性化を実現する手法。

複数のサブシステムで構成されるネットワーク上のシステム

 右下の小さな図は、住基ネットやLGWANと、国の機関で運用されている他の行政システムとの接続関係を示すものです。「電子政府のネットワーク」は霞ヶ関WANを指しています。この図にはありませんが、いくつかの民間機関(政府機関の外郭団体)も、住基ネットから個人情報の提供を受けています。したがって、こうした霞ヶ関WANに接続する(本人確認情報などの提供を受ける)府省庁のシステムや(本人確認情報などの提供を受ける)民間機関のシステムを含む全体が、本来の意味での「住民基本台帳ネットワークシステム」となります。同じように、都道府県の内部システムにおいても、本人確認情報を利用するシステムは、住基ネットの一部を構成するシステムということができます。

 いいかえると、住基ネットのようなMIS的なネットワークシステムは、通常知られているネットワークの範囲(基幹となるネットワークの範囲)に限定されたシステムではなく、これに接続する多数のサブシステム(その多くは既存の機関LANなどを通じて接続されるシステムや端末)を含む複合システムとして構成されています。

情報の流通から見たMIS的なネットワークシステムの特性

 このように見ていくと、情報の流通という側面でいくつかのMIS的なネットワークシステムの特性が見えてきます。

  1. MIS的なネットワークシステムは、多数のサブシステムから情報を収集して上位ないし中央のデータベースに蓄積している
  2. MIS的なネットワークシステムのデータベースは、多数のサブシステムに情報を提供し、効率的な情報の配布(共有)などの効果によって、事務処理の効率化をめざしている。

MIS的なネットワークシステムと分散開放型ネットワークシステムの本質的な差異

 むろん、これだけの特性であれば、通常の分散開放型ネットワーク上のサーバー/クライアント型システムとのちがいは、あまりめだちません。しかし以下のような点では、分散開放型システムとの本質的な違いを示しています

  1. システム上で配布される情報は、システムに接続されるサブシステムに対して限定的に提供されるもので、一般的に公開されることはない
  2. サーバーは水平的・競争的に共存しているのではない(階層的・従属的に配置されている)
    接続しているシステムや個人は、任意の情報やサービスを公開することができない
  3. システム上に蓄積され提供される情報は、その本来の発信者に帰属するものではなく、MIS的なネットワークシステムの運用主体(行政システムであれば行政機関)に帰属している。同時に、情報が個人情報である場合、このシステム上にはその個人情報の本人は主体として参加していない。したがって、自己の「個人情報」を本人は何らコントロールすることができない

 取り扱われる「個人情報」の「本人」が、システム上に存在しない(接続していない)ことは、行政機関のMIS的なネットワークシステム、つまり現在の電子政府・電子自治体が採用しているシステム形式のきわだった特性であると考えられます。


●もくじ(Slide番号でジャンプ)

01:行政機関のMIS的なネットワークシステムへの傾斜と 人権保障・プライバシー保障の課題

02:1 東アジアの動向

03:  韓国の全国教育行政システム(NEIS)

04:  My Kard(マレイシア)

05:2 MIS的なインターネットへの警鐘

06:3 行政における統制型(MIS的)ネットワークシステムへの傾斜

07:  住民基本台帳ネットワークシステム(論理的構成)

08:  自治体共同IDC(経済産業省実証実験)

09:4 行政(公共)サービスにおける 個人情報の収集・利用

10:5 行政(福祉)サービスにおける プライバシー

11:6 行政システム/サービスにおける人権/プライバシー侵害の発生要因

12:7 (日本の)NPOおける課題

13:8 NPOをとりまく環境(1)NPOのネットワーク接続

14:9 NPOをとりまく環境(2)ネットワーク環境

15:10 NPOをとりまく環境(3)プライバシー保障

16:11 NPOの課題

17:12 国際的な課題

18:  参考資料