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(3)プライバシー保障

 最後に、NPOが接続することになるネットワーク上での、サービス受給者の「個人情報」の取り扱い、とくに「プライバシー保障」がどのように行なわれるかを考えてみます。

地域NPOはクリティカルなプライバシーを取り扱っている

 すでに指摘してきたように、NPOとくに福祉分野でサービス受給者と密接な関係を持っている地域NPOは、その収集・利用する個人情報がクリティカルなプライバシーそのものであるような情報であることをよく理解しています。サービス受給者のプライバシーは、本人とサービススタッフとのフェイスツーフェイスの信頼関係を基礎として守られるしくみが維持されていると考えられます。

NPOには、ネットワーク上での個人情報のコントロールができない

 ところが、NPOが電子自治体等のネットワークに接続されると、フェイスツーフェイスの信頼関係の中で収集された個人情報は、ネットワーク上で何らか形で共有されることになります。この情報共有の仕組みとして現在考えられているものは、いくつかの自治体が中心となって運用される地域IDCです。ここに、地域住民の多面的な個人情報が、さまざまなルートで大量に収集・蓄積されて、相互連携の中で行政サービスの効率化と質的向上がはかられることになります。

 当然のことながら、IDCに蓄積・利用される個人情報は、すでに本人から切り離されており、本人によるコントロールを受けません。しかし、IDCでの個人情報の利活用に対して、本人との信頼関係をもとに個人情報がゆだねられたNPOに、この個人情報のコントロール、ネットワーク上でのプライバシー保障ができるかといえば、できません。

 例えば、住基ネットの限定的な本人選択制(通称「横浜方式」)を実行しようとした横浜市が、上位のサーバー上に記録された住民の個人情報を削除できない(システム上で削除の機能が自治体に対して提供されていない)事態に直面したことを、典型的な例として指摘することができます。個人情報は、それを入力したNPOからも切り離されて蓄積・運用されています。

NPOは、ネットワーク上でのプライバシー保障のための指導的理念を持っていない

 電子自治体の値とワークに接続されることになる地域NPOは、こうした事態を予想していません。ネットワーク上での個人情報の取り扱いにはきわめてナイーブで、どのようなプライバシー問題が発生しうるか、それに対してどのような防御対策がシステム上、あるいは事務処理手続き上必要となるかを、まったく想像できないでしょう。

 プライバシー保障に責任を負う立場にあるNPOは、その責任に見合ったネットワーク上でのプライバシー保障のための指導的理念を持っていません。

 このため、個人情報の収集・入力に責任を負うNPOは、IDCなどにおける個人情報の運用に対して、これをコントロールしようとする発想を持ちません。当然のことながら、NPOのネットワーク接続にあたって、NPOによる個人情報のコントロールを実現するシステム上の機能の実装を求めることもありません。


●もくじ(Slide番号でジャンプ)

01:行政機関のMIS的なネットワークシステムへの傾斜と 人権保障・プライバシー保障の課題

02:1 東アジアの動向

03:  韓国の全国教育行政システム(NEIS)

04:  My Kard(マレイシア)

05:2 MIS的なインターネットへの警鐘

06:3 行政における統制型(MIS的)ネットワークシステムへの傾斜

07:  住民基本台帳ネットワークシステム(論理的構成)

08:  自治体共同IDC(経済産業省実証実験)

09:4 行政(公共)サービスにおける 個人情報の収集・利用

10:5 行政(福祉)サービスにおける プライバシー

11:6 行政システム/サービスにおける人権/プライバシー侵害の発生要因

12:7 (日本の)NPOおける課題

13:8 NPOをとりまく環境(1)NPOのネットワーク接続

14:9 NPOをとりまく環境(2)ネットワーク環境

15:10 NPOをとりまく環境(3)プライバシー保障

16:11 NPOの課題

17:12 国際的な課題

18:  参考資料