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●地方自治の不在

(3) (参考)インターネット方式だったらこんな形

 参考までに、インターネット型ネットワーク構造の概念図をご紹介しておきます。
 インターネットのこのような構造は、地域の独立性が高いアメリカで発展したもなので、その特性をよく反映しています。図中にあるように、国や州や市町村、そして公共的な活動をしているNGOなども、概念的には対等の立場でネットワークに参加していて、「権力中心」のような存在はありません。
 インターネットのネットワーク概念は、アメリカの「多元的な社会調整機能(ガバナンス)」の形態(「多元的国家論」などといわれますが)そのものの反映とも言えるものです。その意味では、インターネットがアメリカで生まれたのは必然的なことでした。このネットワーク概念は、多元的国家論の国アメリカの枠をこえて、現在では国際社会から広く支持を受けています。

 インターネットのこのようなネットワーク構成は、一方では、ボトムアップで目先の必要に応じて相互接続を拡大していった、その場しのぎの無計画なネットワーク構成のようにも見え、その点で「非効率」と感じる人もいるはずです。しかしインターネットの技術は、そうした柔軟なネットワーク構築(相互接続)や「目先の必要」という動機の集積の積極的な受け入れをめざし、その結果非効率に陥ることがない技術として開発されました。
 こうした「インターネットの不規則な構造」には、技術的に見て積極的な側面がたくさんあり、中央集中的なネットワーク構造に比べてはるかに効率的な部分をたくさん持っています。

*上図のネットワーク概念図は、ネットワーク参加者の間での情報の交換ルート(論理的なネットワーク構造)を示します。「参加者」を示す○印では、情報内容や発信者・受信者に関係なく、自分のあての情報以外に対する「無制限な情報の中継」が相互に提供されています。
 また、インターネットの「物理的な回線接続」は、必ずしもこのような単純網の目構造とは言い切れません。「バックボーン」と呼ばれる長距離・大容量の中継回線に情報が集中したり、そこから回線が細かく分岐したりする「物理的構造」はたくさん含まれています。しかし、「参加者」が対等であるという原則が守られ、また「2点間の情報伝達ルートは複数存在しどのルートを通るかは限定されていない」というもうひとつの原則も確立されており、論理的な概念としては「網の目構造」が確保されています。

 こうしたインターネット型のネットワークが国内でも全世界でも発達・定着してきた現在、社会の重要なシステムのひとつである「電子政府・電子自治体」に対して「住基ネット」や「LGWAN(総合行政ネットワーク)」のような「中央集中的なネットワーク概念」を持ち込むことは、「参加者の対等性」を損なう行為であることはまちがいありません。
 あえていうなら、「インターネット」という技術を通じて、日本の自治体には現在、自治権の拡大、地域の独立性の拡大・確保を実現する大きなチャンスが与えられているのですが、自治体が「住基ネット」や「LGWAN」を無批判に受け容れるとしたら、それはこうしたチャンスを自ら放棄することだともいえるのです。


●もくじ(Slide番号でジャンプ)

01:技術的視点から 札幌市「選択制」を考える

  02:住基ネットの現在:プライバシーの危機

  03:個人情報の安心と安全

04:長野県審議会報告書 における指摘

  05:多数の自治体で住基ネットは外部と接続されている

  06:セキュリティにどれだけコストをかけるべきかという問題提起

  07:自治体首長の安全確保義務規定(住基法36条の2など)の重要性

08:住基ネットの持つ問題

  09:監視社会のインフラ(プライバシーの侵害)

  10:セキュリティが十全でも プライバシー侵害は起きる

  11:地方自治の不在

    12:(参考)インターネット方式だったらこんな形

  13:住基ネット全体のセキュリティ確保は失敗している

    14:住基ネットの信頼基盤構築失敗のプロセス

    15:相互信頼にもとづくネットワーク参加の手続き

  16:セキュリティコストを含めた行政システムの費用対効果の評価ができていない

  17:電子政府・電子自治体は「情報公開と市民参加」の 可能性を活用できていない

18:どのような選択制が有効か

  19:技術的視点から見た自己情報コントロール権の 根拠と目的

    20:セキュリティの確保・プライバシーの保障のプロセス

  21:「選択制」(自己決定:自己情報コントロール)の限界

  22:住基ネットにおける「選択制」の意義

  23:「住基ネット」における「選択制」を現実的なものとするための条件